シリア軍が無差別発砲を命令(NHK)

先日、アサド体制の打倒を目的とするシリア反体制派の会議に日本外務省が職員を派遣したという記事があり、また拷問死した反体制活動家の葬儀に、米欧諸国とともに大使を派遣したので、日本も米国のシリア打倒作戦に本格的に足を突っ込んだなと察したが、昨日は朝からNHKが報道面から後押しを始めた。

葬儀の様子。左から5番目が日本の鈴木大使。
http://www.youtube.com/watch?v=VVE5kl_qIoY

(韓国大使も声は掛けられたのではないかと想像するが、シリア市場における韓国の存在感は大きいので、韓国大使は協力を拒んだのではなかろうか。)

それでNHKの記事だが、NHKが自力で取材した部分はそれでいいとして、下線(↓)を引いた「シリア軍が住宅地を戦車で砲撃した」の部分は、私は虚偽報道である可能性が高いと思う。その理由は、

(1)ロンドンの人権団体の発表は、これまでも誇張の程度がひどく、裏を取らずに報道するのは不適当。例えば、死者の数は8月後半から現在にかけて、政治交渉の進展具合に歩調を合わせて2200→1600→2200→2600人と乱高下した。死者数が減るはずないだろう。

(2)住宅への砲撃については、動画情報がない。(CIA自身が動画で確認しているというのに、その動画がない。)

(3)過去にも同様の砲撃報道がいくつもあったが、虚偽だった。例えば、8月上旬のハマー掃討作戦の最中に、同団体が住宅への砲撃を主張したが、8月下旬に外国人ジャーナリストが現地入りし、虚偽であることを確認その23)した。

おまけに、(1つ目↓)朝のニュースでは、砲撃は「人権団体によりますと」と伝聞の形式になっているが、(2つ目↓)夜のニュースでは伝聞が抜け落ちて、事実として報道する形式に変更されている。報道に携わっている人だったら、たとえ字数が限られていても、このような省略作業をしてはいけないことは、叩き込まれているはずだ。

砲撃のネタは、「ハマー、ホムスの上空を戦闘機が飛び、デモ隊を威嚇している」というネタと合わせて、飛行禁止空域をシリア上空に設定してもらうために、反体制派が意図的に流している情報。(非武装・無抵抗の市民が、度を過ぎた武力で虐殺されている→軍事介入のシナリオを期待している。)

このカラクリは、既に政府にも一般国民にもバレていて、「介入」という言葉は外患罪に相当するので、8月26日のデモを最後に姿を消し、9月2日からは「国際的保護」「国際監視」という用語を使うようになった。しかし、保護・監視であっても、独立国から主権を奪う呼びかけであり、外患罪には変わりないので、9月16日(金)のデモでは、「国際的保護」という紙は若干数確認できただけで、数はずっと減った。今週また警察が圧力を徹底するから、来週には無くなるだろう。

全体を見渡すと、シリアの反政府デモは、勢いを失っているように思う。相変わらずなのは、ホムス市内の3ヶ所くらいと、ど田舎で人口が少ないイドリブ県の若干の町・村くらいで、ほかの都市では参加者は減り、熱気も冷めた。インパクトのある動画はほとんど見つからない。

政府は12月に地方議会選挙、来年2月に総選挙を予定しており、もし本当に政治改革に関心がある人ならば、立候補者の人選をする時期だ。新政党法に基づく政党設立申請は50件に達する見込みだという。新しい政党であっても、設立時に党員を最低1000人確保しなければならないので、少なくとも全国で5万人(=1000人×50政党)が、次の時代をにらんで動き出した。

デモ参加者数は、多かったときで3万弱6万4千人なので、デモの勢いが無くなった現在、政党活動をする人口が、デモ動員数を上回ったと見て構わないと思う。

ニュースでシリアの悪口を広めたところで、国連安保理は、ロシア・中国がブロックするから、右にも左にも動かない。海外在住組のシリア反体制派は、もともと過激派なのだが、私の目には、彼らは国内に浸透することに失敗し、浮き上がっているように見える。

初めは勢いの良かった米欧も、対シリア制裁を強める決意が固まらず、政府部内が混乱しているよう。「私はどうしたらいいですか?」とアイデアを募集する自称・専門家まで現れた。情けない。

私は、シリアは今のような孤立状態になっても潰れないという話を、30年以上前にバアス党員から聞いていたので、興味深くニュースを見ているのだが、米英やトルコの中東研究は、そこまで詰めて検討していなかったということなのでしょう。



シリア 住宅への無差別攻撃も
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110917/t10015667211000.html
http://megalodon.jp/2011-0918-0101-50/www3.nhk.or.jp/news/html/20110917/t10015667211000.html
9月17日 8時24分

反政府デモへの弾圧が続く中東のシリアでは、デモが大規模になるイスラム教の金曜日の集団礼拝に合わせ、治安部隊が、デモの参加者が多い地区の住宅を無差別に攻撃するなどして、2日間で38人が死亡しました。

シリアでは、アサド政権の即時退陣を求める市民のデモに対して、軍や治安部隊が厳しい弾圧を続けています。イスラム教の金曜日の集団礼拝が行われた16日も、首都ダマスカスの郊外や中部のハマの郊外などでデモが起きたのに対し、軍や治安部隊が銃撃や砲撃を加え、人権団体によりますと、2日間で38人が死亡しました。

人権団体によりますと、このうち、ふだんから大規模なデモが起きるハマの郊外では、デモが始まる前に、軍が戦車を使って、無差別に住宅を砲撃したということです。

アサド大統領は「デモの参加者は欧米の陰謀に扇動されたテロリストだ」として、弾圧を正当化していますが、市民に対する無差別な攻撃の実態が明らかになれば、国際社会からの非難が一層強まるものとみられます。



シリア軍が無差別発砲を命令
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110917/t10015673791000.html
http://megalodon.jp/2011-0917-2036-20/www3.nhk.or.jp/news/html/20110917/t10015673791000.html
9月17日 19時40分

シリアのアサド政権が反政府デモに対する厳しい弾圧を続けるなか、シリア軍の元関係者がNHKの取材に応じ、軍の内部で、デモに参加している市民に無差別に発砲するよう、命令が出されていることを明らかにしました。

シリアでは、アサド政権が反政府デモに対する厳しい弾圧を続けており、16日も中部のハマなどで、軍の戦車が住宅地を砲撃するなどして、この2日間で新たに38人が死亡しました。アサド政権が外国メディアの入国を規制するなか、NHKの取材班はこのほど、隣国のレバノンの村でシリア中部から逃れてきた人々から証言を得ました。

このうち、デモに参加していた息子2人を殺害されたという夫婦は、「当局から遺体を引き取るよう呼び出され、軍ではなく反政府勢力による発砲で死亡したという、偽りの書類に署名させられた」と述べ、政権側が弾圧を隠ぺいしているとしています。

また、軍を離反したという元兵士は、「軍の内部では、デモの参加者は全員テロリストで、女性や子どもも爆弾を隠し持っている恐れがあるので、ためらいなく発砲するよう、命令されている」と述べ、デモ参加者には無差別に発砲するよう、命令されている実態を明らかにしました。

人権団体によりますと、一連の弾圧で2600人以上が死亡し、このうち300人以上は女性や子どもと見られています。新たな証言からは、孤立を深めるアサド政権が、反政府デモの広がりを食い止めようと、徹底した弾圧を続けている実態が伺えます。

"シリア軍が無差別発砲を命令(NHK)" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント