国をむしばむ機能不全 コロナ下、自宅で尽きた命 ニッポンの統治

国をむしばむ機能不全 コロナ下、自宅で尽きた命 ニッポンの統治 危機にすくむ① 日経新聞 2021年11月22日

自民党の国会議員だった塩崎恭久氏は3月、泣きじゃくる知人の訴えを聞いた。「家族が自宅で症状が急変して亡くなった。医師が診てくれていたら悪化に気付けたのに」。自宅療養中に相談していたのが保健所の保健師だったのを嘆いた。塩崎氏は厚生労働省の幹部に提案した。「保健所が持つ自宅療養者の情報をかかりつけ医に伝えてオンラインで診る仕組みをつくれないか」

日ごろ診察している医師なら重症化の兆候を見つけやすいと考えたが想定外の反応が返ってきた。「行政情報は出せません。症状急変リスクはしょうがないんです」「じゃあ死んでいいってことか。おまえら命を救うために厚労省に入ったんじゃないのか」。問うと相手は押し黙った。

幹部は医師免許を持つ「医系技官」だった。事務を担当する官僚とは異なる職種で、国家公務員試験を受けずに入省する。およそ300人の人事はトップの医務技監が握り、閣僚や事務次官の統制が及びにくい。政府内で「ギルドのような独自組織」と呼ばれる。自宅療養者の情報共有に反対した理由を、与党幹部は「医系技官が保健所の権益や開業医の負担に配慮した」とみる。

この医系技官に直接聞くと「法律上、本人の同意なしに感染情報は出せないと説明しただけ」。自宅療養者には行政が委託契約した医療機関が健康観察を担う制度があると強調し「今すぐ対応を求める塩崎氏と今の仕組みで可能なことをやる私の議論はかみ合わない」と総括した。(後略)