小室さんの論文コンテスト優勝はどれくらいすごいのか

小室さんの論文コンテスト優勝はどれくらいすごいのか
岩田太朗
2021/10/27
https://japan-indepth.jp/?p=62623

【まとめ】

・小室圭氏、ニューヨーク州弁護士会の論文コンテストで優勝。

・前回の論文は、SECの規制基準の明確化などの提言を行っているが、一般論の域を出ていない。

・今回の受賞作も「コンプライアンス規制の起業家への影響」など、一貫して、相互が信用できる社会のため設計された規制や説明責任から生じる制約に対する疑問や問題意識を示している。

 

秋篠宮皇嗣殿下の長女である眞子元内親王(30)と10月26日に結婚した小室圭氏(30)がニューヨーク州弁護士会の論文コンテストで優勝し、賞金2000ドル(約23万円)を獲得した小室氏の表彰式がオンライン形式で、結婚の次の日の日本時間27日に行われると、日本のメディアが一斉に報じている。

その横並びの報道スタイルからして、結婚に関するプロセスや発表を一貫して「プロデュース」していると伝えられる元内親王の意を体した宮内庁が流したニュースであると思われる。

ニューヨーク州の弁護士資格を持つ清原博氏はワイドショーで、「ロースクールの授業の予習復習も大変なのに、なおかつ司法試験の勉強もある。さらに論文も書く…。これはスーパースターですよ。スーパーマンですよ」と絶賛。婚姻届提出、そして表彰式という流れに「おめでた続きですよね」と祝福した。また、カリフォルニア州の弁護士資格を持つケント・ギルバート氏は、「英文読みましたけど、ばっちりです。大丈夫です」と太鼓判を押した。

ネットでは、「本当であればすごい」「実力があるのだな」などの感想が上がっている。一方で、「出来レース」「代筆だろう」など疑問視する声もある。それに対し雑誌Flashは、「難癖だ」と断じ、「その実力に偽りはないはず」とする。

この賞に関する知識が一般国民にないだけに、受賞報道をどのように捉えてよいのか戸惑う人が多いようだ。そこでこの記事では表彰式に当たり、①授賞組織と賞の位置付け、②小室氏の論文の法学上の価値、そして、③小室氏の執筆スタイルを分析したい。

■ すごい賞ではない

まず、授賞者について見てみよう。日本では「ニューヨーク州弁護士会」と報じられている。それ自体は間違いではないのだが、実際にはニューヨーク州弁護士会の下部組織のひとつである「ビジネス法部門」が審査と選考を行う主体だ。さらに、賞は学生向けのものにすぎない。

ここで日本のマスコミは、上部組織の「ニューヨーク州弁護士会」が授賞者であるような印象を与え、学生論文コンテストのひとつに過ぎないものを、さも「すごい」一般コンテストと思わせることにより、いつものように「盛って」いる。たとえば、京都市教育委員会の子ども若者はぐくみ局から表彰を受けた人が、「私は京都市から賞を受けた」と主張するようなものだ。間違いではないが、授賞組織や賞の重要度について誤解を与える。

今回、小室氏が受賞した毎年恒例の学生論文コンテストは、米国ではよくある学生向けコンテストのひとつであり、受賞作が掲載されるジャーナルの「NY BUSINESS LAW JOURNAL」も、尊敬を受けるアカデミックなものではなく、実務的かつ実用的な情報が中心だ。引用回数が多い査読誌の「イェール・ロー・ジャーナル」や「ハーバード・ロー・レビュー」など高級ロー・ジャーナルとは比較にならないことに留意する必要がある。

受賞は学生個人としては立派なことには違いないが、法学上の新説を打ち出したとか、憲政上の定説をひっくり返したなどの学問的な価値があるとは言えず、テレビや新聞で大々的に全国ニュースとして扱うレベルの話題ではない。

ちなみに現在首都ワシントンで働く筆者の娘は、学部生として多くの賞や奨学金を得たが、それらは経歴書においては「トッピング」に過ぎず、採用時に最も重視されたのは、「何を、どんな目的意識で完遂してきたか」「社会にどれほどのインパクトがあり、将来的可能性はあるか」であった。競争相手にはできない結果を常に出さねばならない重圧であり、学生向け論文コンテストひとつの受賞で、「実力がある」「おめでたい」「バッチリ」などと浮かれていられるような甘い世界ではないのである。

■ 論文の法学上の価値

今回の受賞作である「ウェブサイトへの接続におけるコンプライアンス問題と起業家への影響」は、上記ジャーナルの2021年春号に掲載されているとのことだが、ニューヨーク州弁護士会のビジネス法部門の当該サイトにはまだアップロードされていないようで、アカデミックな出版物の検索エンジンであるWorldCatでもヒットしなかった。

だが小室氏は、同誌の2019年夏号に掲載された論文で、昨年の同じ学生論文コンテストの2位に入賞している。ウェブ上の資金調達であるクラウドファンディングにおける様々な問題について簡単にまとめた数ページの「Challenges and Implications for Potential Reforms of Crowdfunding Law for Social Enterprises」は、ウェブ上で閲覧が可能だ。今回の論文はアクセスできないため、この前回の論文のアカデミックな価値を考えてみたい。

結論から述べると、「NY BUSINESS LAW JOURNAL」の学生論文コンテスト選考基準である、①読者の興味に合致すること、②タイムリーさ、③独創性、④リサーチと論文の質、⑤明解さと簡潔さに関し、小室氏の論文が条件を満たすのは恐らく読者アピール、時宜を得た話題、わかりやすさと簡潔さのみで、最も重要な要素である独創性や質が伴っていないように見える。

そもそも、文章中に「~のように主張する人がいる」「データによれば」と述べるために、「Some people also argue that」「Some data imply」などという表現を使っているが、米国では学部生の期末ペーパーであっても、こんな稚拙な表現を使えば減点対象になる。代わりに、「Constitutional scholars put forth arguments on」とか、「Industry data indicate」のように、主語をより具体的に伝えなければならないからだ。とは言え、実務的かつ実用的な情報に関しては、有用なデータを簡潔に上手くまとめている。

全般的には、小室氏の論文は学問的には残念なレベルだと筆者は感じる。学術論文で一番大切な「独自の視点」「ユニークな疑問」「仮説と検証」に欠け、結論として「法の仕組みを強化しなければならない」と当たり前のことを言っているだけであるからだ。具体的な方策や道筋として、米証券取引委員会(SEC)の規制基準の明確化などの提言を行っているが、一般論の域を出ておらず、高い独創性があるとは言えない。

■ お金集めへの関心

以上のように筆者は、小室氏の前回の論文の学問的な価値はさほど高くないと考える。しかし、別の視点から彼の論文を読み解くと、面白いことが見えてくる。

それは、小室氏の「金集め」「詐欺」や「信用」への強い関心だ。たとえば小室氏は、ウェブ上の資金調達であるクラウドファンディングのプロセスで、詐欺行為やその懸念が高まることで、出資者からの資金調達に制約がかけられてしまうことに注目する。

ここで小室氏は、情報開示などのオープンで公正な解決策が、実際に詐欺行為を減らせるかを疑問視する声があることを紹介し、ディスクロージャーが知識の深い投資家をして出資を踏み止まらせたり、当局の規制が資金調達を困難にするネガティブな側面にフォーカスを当てている。つまり、プロセスの公正さや出資者の保護よりは、お金を調達する側からの都合と視点が前面に押し出されているように見えるのだ。

このようにして小室氏は、出資者保護のための規制強化が、クラウドファンディング発展に必ずしも寄与しないと示唆し、「出資側の信頼を損ねれば、資金調達が困難になる」という、お金を集める側からの真理を説いて、論文を結んでいる。つまり「信用」を、ステークホルダーの互恵や社会制度の公正さといった視点から捉えるのではなく、単なるお金集めのツールあるいはひとつの機能的要素として見ている。

根底にあるのは、お金を出す側を守ることでも公正さを確保することではなく、いかに出資者の信頼を活用して、最低限の規制でクラウドファンディングを発展させられるか、というビジネス優先の意識のようだ。小室氏の論文は、制度上のチャレンジを逆手にとってチャンスとして使うべきだと言っており、そのお金を集める側としての「前向きな発想」が、彼の人物像を読み解く上での重要なカギとなりそうだ。

こうして見てきたように前回の論文は、小室氏の「金集め」「詐欺」や「信用」への強い関心をうかがわせるものであったし、今回の受賞作も「コンプライアンス規制の起業家への影響」など、一貫して、相互が信用できる社会のため設計された規制や説明責任から生じる制約に対する疑問や問題意識を示している。

そして、規制や説明責任に対する回避的な姿勢こそが、眞子元内親王との結婚にも、深い影を落としているように思えてならない。



まあ、実務の観点からすると、ご立派な学術論文よりも、すぐ使える安直なものが重宝されるわけのはよくあることなんですが(苦笑)。

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